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キャリアカウンセラーズ

キャリアカウンセラーズ

あまりにも勉強が退屈で書きました。背景や、人物像など、めちゃくちゃです。

何も糧にしないでください。

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世紀末。十九の世紀末。十九回目の世紀末。

アメリカ、ボストンにはゾンビが溢れ返っていた。

 

「おれは人間をやめるぞ、ジョジョオー」

肌と一緒に、理性も溶けてしまったゾンビたちは、スーパーイドの検閲をうけないエスの欲動のままに、他人のものを壊したり奪ったり、親しくない異性の指を舐めたりしました。

フランク・パーソンズの娘さんも、たくさんの被害者のうちの一人でした。

「マイ・スウィート・ハートゥ」

ゾンビの唾液で髪がべとべとになった愛娘は、家のドアを開けてすぐ、玄関で倒れてしまいました。ヤカンを火にかけたまま駆け寄ったパーソンズさんに、愛娘さんは段ボール紙の筒を手渡しました。

「アイ、アイ、アンダースタンドゥ」

それが、パーソンズさんの娘さんの、最後の言葉でした。

「マイ、スウィートハートゥー」

パーソンズさんの雄叫びの後ろで、ヤカンが元気良く、蒸気を吹き出していました。

愛娘をベッドに寝かせてから、パーソンズさんは、アメリカンコーヒーを水筒にいれて、書斎にはいりました。

満身創痍の娘さんから手渡された段ボール紙の筒には、一枚の丸まった紙が入っていました。そこには大きく、

「san-gyoh-kaku-mey」

とだけ血文字で書かれていました。

社会運動家、パーソンズさんのリベンジが、いま始まりました。

ゾンビの大量発生の原因について研究を重ねていたパーソンズさんには、娘さんのダイイング・メッセージが何を示しているのか、すぐに分かりました。

産業革命。

それがゾンビ大量発生の原因だと、娘さんは、すべての解決を父に託したのです。それはパーソンズ家だけにとどまらない、社会的な問題でした。

産業革命後、急速な工業化のすすんだ都市に、職を求める多くの若者が集ってきました。

——職場の変質。

機械化、管理化、搾取、孤独。

仕事の質の変化から、早期離職となり、生活苦や社会的孤立から、絶望のままに理性を脱ぎ捨て、ゾンビと化す人々が増えたのです。

いま、こうしている間にも、家の外では、第二、第三のマイスィートハートゥが悲劇に見舞われています。

「ヴォケーショナル・チョイス」

天啓の一言を口にしたパーソンズさんは、もうただのパーソンズさんではありませんでした。髪は逆立ち、全身が黄色い光に包まれていました。そう、スーパー・パーソンズさん、改め「カウンセラー」の誕生です。

「丸い釘は丸い穴に」

スーパー・パーソンズさん改めカウンセラーはそう呟くと、次の瞬間には消えていました。テレポートにより、スラムの街角に立ったパーソンズさんの周りでは、ゾンビたちが跋扈していました。非・ゾンビの人間を見つけ、それぞれのゾンビたちが「みっけ」とか「ワーオ」とか「ww」とか口にしました。

パーソンズさんは不敵に笑い返し、右足で自身の周りに円を描きました。

「ウェルカム」

そうパーソンズさんがそう挑発するよりも早く、二万を超えるゾンビたちは、パーソンズさんのところに殺到しました。

「ヒアイズ、職業相談所」

その言葉を最後に、パーソンズさんの姿は、ゾンビの群れに隠れてしまいました。

次の瞬間、パーソンズさんのいたあたりから光の柱が立ち上がりました。その光に包まれたゾンビたちは、一匹ずつ、光の玉になって、空高くのどこかに飛ばされていきました。

声と、音が聞こえます。

「トレイト・ファクター・マッチング!」

「トレイト・ファクター・マッチング!」

パーソンズさんの声です。パーソンズさんが「トレイト・ファクター・マッチング」と一回唱えるのに合わせて、一体のゾンビが天に飛ばされていきました。

「トレイト」

トレイト、とは特性を意味します。スーパー・パーソンズさん改め、カウンセラーは、その声に合わせて、ゾンビの胸に右手をかざしました。すると、そのゾンビの胸が緑色に輝きました。彼の職業的個性は緑色、ということですね。

「ファクター」

ファクター、とは因子を意味します。スーパー・パーソンズさん改め、カウンセラーは、その声に合わせて、ゾンビの胸に、左拳を叩き込みました。ゾンビの胸板をつきやぶったそのパンチは、緑色に輝いていました。そのゾンビの職業的個性にあった採用条件の求人情報を照会できた、ということですね。

「マッチング!」

マッチングとは、マッチングを意味します。金色に輝くパーソンズさんは、その声に合わせて、両手を振り上げ、頭の上でクロスさせました。すると、胸に風穴のあいたゾンビは、光に包まれ、昇天しました。彼の個性とマッチした条件の職場に運ばれた、というわけですね。決して、成仏したわけではないですよ。

こうして、スーパー・パーソンズさん改め、カウンセラーは、ゾンビと化した人々を次々と、その人の個性に適った新たな職場へ、送り飛ばして行きました。

「トレイト!ファクター!マッチング!」

その――ゾンビ殲滅作戦——もとい特性因子理論とのちに呼ばれる、その職業相談は、不眠不休で実施されました。七色に光は点滅し、昇天を待つゾンビたちが押し合いへし合う夜を、彩っていました。

「トレイト!ふぁファしゃ!ま!」

しかし、一人対二万人です。三日三晩が経ち、スーパー・パーソンズさん改めカウンセラーにも、ついに限界が訪れました。

「まっひ……うーん、ばたんきゅう」

そう力なく倒れたパーソンズさんの目の前には、あと一匹だけ、ゾンビが立っていました。髪が黒色に戻った、うつぶせのパーソンズさんを、どこか寂しそうな瞳で、ゾンビは見下ろしました。仕方なく、といった感じで、パーソンズさんに向かって口を開いたゾンビの胸板を、誰かの左拳が貫きました。

「マッチング!」

さんきゅう。と天にあがったゾンビを見送ったのは、パーソンズさんの愛娘でした。

力つきたパーソンズお父さんを、その愛娘が看取りました。

 

つづく

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特に意味はないセレクトです。でも私はこの本が好きです。(T)


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