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農薬は悪なのか

1年前「未来の食卓」という映画を見ました。

フランスのオーガニック食品を推進するドキュメンタリー映画です。

オーガニックとは、科学農薬や肥料を使っていないということ(厳密な定義文が見当たらず、自己定義)。

その映画では、農薬による健康被害などを訴えているのですが、衝撃的なシーンがありました。

フランスの農家の方が、散布する農薬を、巨大な器で調合しているのですが、鼻血が止まらなくなってしまうのです。

そのイメージは、私の頭に強烈に焼き付き「農薬=毒」という印象を固定化させました。私はその映画をフランスで見ました。帰国後、私は都内で無農薬の野菜を手に入れることのできるお店を探し、いかに流通野菜が農薬によって支えられていることを実感しました。配達サービスもあるのですが、値段や気軽さなどから、結局スーパーで普通の農薬使用野菜を買い、たまに有機野菜を買ってみる、という生活に落ち着きました。

その後、仕事で野菜を扱うことになり、野菜の美味しさの大部分が「新鮮さ」にかかっていることを、現地の試食で知りました。都心で食べる野菜とまるで別物でした。私が視察した、農業が盛んな地域の産直では、店頭に並ぶ野菜のほとんどをその日の終わりに農家に返品していました。そのとき、私は頭の中に固定させていた「無農薬=安心、安全、美味しい」という単純な神話に疑問を持ち、調べてみることにしました。意外と手間がかかりました。「無農薬、有機農薬、農薬」の三点を対立させて比較する文献が見つけられなかったのです。調べ方が悪かったのかもしれませんが、無農薬野菜を販売する業者さんの文句(ネットでの触れ込み)も「自然で安心、美味しい」など曖昧な説明が多く、このテーマについては「雰囲気の情報」が手近な領域で支配的なのだろうな、と感じました。「無農薬は、野菜の自らの毒を出させてしまう」とか「薬漬けの野菜なんか食べる気になりますか」とか過激な情報ばかり、メディアから拾うことができて、何だか振り回されました。

結論から言うと「無農薬=美味しい」は間違っていました。

そして、私が読んだ数冊の本(の科学的な数値の説明)によると農薬による食のリスクは微々たるものでした。現代の農薬使用には厳しい基準があり、手洗いをしないことによる「食中毒」やモチなどを「喉につまらせる」リスクのほうが統計的にはよっぽど高かったです。もちろん、ラットでの実験結果=人間に100%適用されるのか、使用化合物が与える影響を現基準はあますことなく網羅できているのか(子どものアレルギー等)、などの懸念はあります。しかしシンプルに「農薬=害悪」としてしまうと、食生活における「建設的な改善策」が出てこないと、よく分かりました。

そもそも農薬が使われた目的です。2つあります。1つは、人が「特定の野菜を同一敷地内で生産する」という非自然的な営みにより「自然の循環」が損なわれるためです。その場所だけ生態系が乱れ、その野菜を食べる単一種ばかりが繁殖することになり「駆除」することが必要になります。2つ目に「野菜の品種改良」です。長い時間をかけて「美味しい」を育てた野菜は「害虫にとっても美味しい」ということでした。植物が持つ防衛機能の「苦み」などが取り除かれ、要するに「丸裸」ということです。か弱い野菜を守るために「農薬」が使われます。消費者たちが「安くて美味しい」を求めるからです。そして「日持ちすること」を望み、「形が良いこと」を望み、様々な農薬が不可欠になっていきます。

また「農薬の定義」もとても広いです。食酢や重曹も含まれます。

それじゃあ「無農薬の良さは」ということになります。リスクが目に見える気がします。「虫食い」とか「苦い」とか「値段が高い」とか。結局信頼できる農家さんか仲介業者を見つけるのが一番な気がします。(ある仲介業者さんは「美味しい無農薬野菜」を見つけるために、農家を一つ一つ回ったそうです)

無農薬と農薬の間にある、有機野菜の焦点は「エコ」です。無農薬の自然栽培もそうですが、そこで標榜されている大義は「自然の循環/多様性を守る」こと。「美味しい/安全」ではないのです(少なくとも大々的には)! ちなみに、有機は認定を取るのが難しいらしく「減農」なんていう表記もあります。食に関するテーマは奥深く、一朝一夕では理解できません。何より、科学の取り組みは、複雑すぎて、説明できるまでの理解が中々すすみません。字にしてみると、もやもやとした結論です。

というわけで、次は、食の化合物の代名詞「添加物」について調べてみたいと思います。安いハムは水ゼリー入れて量を増やしているそうですね。(T)

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今日参照した本は2冊(あとは農家さんや仲介業者さんから聞いた話を参照)。

・図解でよくわかる農薬のきほん(寺岡徹さん 監修)

・誤解だらけの「食の安全」(有路昌彦さん)

以下のリンクは、「農薬のきほん」。農薬から始める「食」の話は、判断材料がとても多岐に渡ります(農薬とは、野菜とは、化合物とは、人の身体とは、などなど)。この本を読めば「農薬」のポイントはおさえることができます。基本を知っていると、やっぱり、様々な検討において「ポイント」になってくれます。辞書代わりに活躍しています。

 


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